きょうのひとりごと:ねぇ、嘘だといってよバーニィ

  • 来年3月より撮影開始を予定している待望の監督作「赤壁の戦い」の製作を控える呉さんがプロデューサーとして参加する「天堂口:BLOOD BROTHERS」の記者会見が先日行われたそうだ。すでに撮影は先月から始まっているということで、出演はダニエル・ウー呉彦祖スー・チー舒淇)、そして「クーリンチェ少年殺人事件」で鮮烈な印象を残したチャン・チェン張震)の3人をメインに、チャン・イーモウ(張藝謀)監督、周さん主演の新作武侠映画「満城盡帯黄金甲」にも出演するリュウ・イエ(劉菀)や、トニー・ヤン(楊祐寧)ら新進気鋭の若手スターによって展開される愛と友情と裏切りのドラマらしい。
  • しかも驚いたことに本作は自作「ワイルド・ブリット:喋血街頭」を翻案したアクション映画で、その舞台はベトナム戦争下から1930年代の上海に移されているという。「喋血街頭」といえば、製作当時中国返還を控え不安に揺れていた香港が天安門事件によって直面せざるをえなかった怒りと絶望が産んだ、暗く重く残酷で無慈悲だが魂を揺さぶる傑作だった。それは「挽歌シリーズ」で高らかに友情の絆を謳いあげてきた呉さんが描いた、友情の崩壊の物語だ。ひょっとしたら、盟友ツイ・ハーク(徐克)と袂を分かったことも影響したのかもしれない。それゆえに「喋血街頭」は呉さんにとって最も私的な想いがこもった作品となった。わたし個人的にも非常に思い入れが強い作品だから、下手は打って欲しくないというのが本音なのだが、しかしながら今回のキャスティングをみると、やっぱり「狼たちの絆:縦横四海」‥つまりは「冒険者たち」「突然炎のごとく」への偏愛が相変わらず感じられるわけで、結局自作ではちっとも女性を描けなかった呉さん的には、あこがれの男女の愛憎渦巻く三角関係を描いた作品を己が手で成就させたいってなところなんでしょうが、それなら何故「喋血街頭」の翻案を謳うのか?「縦横四海」のタイトルは、以前アメリカでのTVリメイクがあるだけに使用できなかったという事だろうか?しかも監督には新人のアレクシー・タン(陳奕利)という人があたり、以前ジェイ・チョウ周杰倫)の「雙刀:DOUBLE BLADE」というPVを監督していた人と聞いて、気になって早速見てみたわけだが、PVの終わりに何故かダニー・トレホが出てきて笑ってしまったが、正直出来はよろしくなかっただけにますます不安が募る。本当にこの大任を彼に任せて大丈夫なのかい?
  • かつて女性を描くことに長けていた徐克が、呉さん的な男を描いた作品が望まれる世相にあって「上海グランド」をプロデュースしたのだとしたら、今回の「天堂口」は全くその反対。なにやら因縁めいて見えてしまうのは、わたしの穿ちすぎた感想だろうか?‥つーか、やっぱりこれは「喋血街頭」じゃないよ!本当はレオン・ポーチの「上海1920」のリメイクじゃないの?最近自作の切り売りが多すぎやしないかい?「喋血街頭」を売るってことは魂を売るってことと等価だよ?あぁ久しぶりに穏やかじゃない話題でありますが、今は大人しく完成を待ちたいと思います。